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市川憂人「牢獄学舎の殺人/未完図書委員会の事件簿」
ミステリ好きの高校生、本仮屋詠太(もとかりやえいた)は、忘れ物を取りに鍵を借りて入った音楽室で、真っ白な表紙の文庫本「牢獄学舎の殺人」を見つける。 タイトルに惹かれ読みふけってしまうが、その小説は「読者への挑戦状」で終わり、解決編がなかった。 困惑しつつも犯人当てに挑もうとする彼の前に現れた杠来流伽(ゆずりはくるか)は、彼を組み伏せて詰問する。 その本をどこで手に入れたのか、あなたは《配本師》かと。 100作を超える「解決編のないミステリ」を残したアマチュア作家、溝呂木厄藻(こうろぎやくも)。 その内容をなぞるかのような事件がこれまでにも起こっていて、彼女はそれらの事件を扱う機
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谷甲州「工作艦間宮の戦争/新・航空宇宙軍史」
第二次外惑星動乱の初頭。 外惑星連合軍の奇襲攻撃で甚大な被害を受けた航空宇宙軍は、戦力の建て直しを急いでいた。 常軌を逸した工数削減で無謀ともいえる戦闘艦艇の修復、再就航が進められる中、工作艦間宮に出港命令がくだる。 対象艦の詳細も伝えられないまま、さまざまな不満、不安を抱え、矢矧艦長は指令に従い、地球圏にむけて減速を続ける該当艦に接近するのだったが。 (表題作) 遠未来の宇宙戦争を描くSFシリーズ。 技術論、戦術論多めで、派手な艦隊決戦とかはこの巻ではほとんどなし。 6編収録の短編集の体裁だけど、各話それぞれはストーリーの起伏などほとんどない感じで、壮大な長編のなかのエピ
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方丈貴恵「少女には向かない完全犯罪」
“完全犯罪請負人”と称し、犯罪遺族の無念を晴らす報復をなりわいとする黒羽烏由宇(くろばうゆう)。 3月14日の夜、彼は何者かから自宅と表向きの仕事場である喫茶店の入ったビルの屋上から突き落とされ、一命はとりとめたものの昏睡状態に陥る。 4ヶ月後、彼は生霊として目覚め、気まぐれから向かった空き家で霊視能力を持つという小学生、音葉と出会う。 ビルから転落した3月の夜、その空き家で会うはずだった依頼人、三井夫妻の娘である音葉から、黒羽は同じその夜に彼らが殺害されていたことを知る。 奇妙な形で利害の一致したふたりは協力して“報復”のためふたつの事件の捜査にのりだす。 大人と子供でもあり
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キャロル・オコンネル「ルート66」
ニューヨーク市警の刑事、キャシー・マロリーのアパートメントで女性の死体が発見される。 死者とどのような関係なのか、その死に何らかの責任を持つのか、キャシーは同僚の刑事たちにも何も語らないまま、旧国道ルート66をたどる旅へ。 ストリートチルドレンとして育ち、伝説的名刑事に保護され養女となるまで、駅で誰かを探していたというキャシーは、その誰かをとうとうみつけたのか。 キャシーと、彼女を追う同僚刑事のライカー、友人であるチャールズの旅は、やがて同じルート66を進む、老心理学者を指導者とする行方不明になった子供をさがす親たちの一行、FBIの追う連続児童殺人犯の存在と交錯する。 シリー
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綾崎隼「冷たい恋と雪の密室」
記録的寒波が新潟を襲った2018年1月11日。 豪雪によって立ち往生した電車に受験を目前にした3人の高校生が乗り合わせていた。 小学生時代からの幼馴染み同士である彼らは遅々として進まない車両の中、出会いからの日々を回想する。 ミステリファンにとってはちょっとタイトル詐欺に思えてしまうけど、そこはまぁ言いがかりで、内容はかなりオーソドックスな三角関係もの恋愛小説。 3人の主人公、博人、静時(しずとき)、千春の、それぞれの視点から語られる三部構成で、この中の誰に肩入れして読むかで印象違うかもしれない。 個人的に千春の一途を通り越して思い込み激しすぎなところとか、正直ちょっと引いたん
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吉川トリコ「マリー・アントワネットの日記Bleu」
上巻(Rose)から少し間が開いてしまったけど、下巻も読み終え。 ルイ16世即位から、スウェーデン貴族Aとの純愛(最近また書簡が公開されたりしてたね)、首飾り事件、あの1789年7月14日、ヴァレンヌ逃亡事件なんかを経て、誰もが知る結末へ。 相変わらずくだけた(くだけすぎ)文体で、本当なら僕には苦手な部類になるはずのところ、不思議に読みやすかった。 逃亡事件のところなんかは、こうなると知ってはいても固唾を飲んでしまった。 アントワネット視点ということで、革命へ向かう世間の空気とかがあんまり描かれないのはあるのだけど、Aの捨て身の献身、彼とはまた違った形の国王への愛など、泣かせ
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10件の「いいね」

吉川トリコ「マリー・アントワネットの日記Rose」
あのマリー・アントワネットが(なぜか現代風な言葉遣いで)色々ぶっちゃける、ケータイ小説風?時代小説とでも言おうか。 18世紀にそんな言葉があるか、と突っ込むのが野暮な話。 10代でフランスに嫁がされ、習慣の違い、宮廷社交界のめんどくささへの不満や鬱屈、のちのルイ16世になる王太子とのまどろっこしい夫婦生活など、なかなか。 上下巻の上巻だけ知らずに読んでしまったのだけど、あのスウェーデン貴族も登場してきて、ルイ15世国王も崩御、いよいよフランス王妃となるところまで。 その行く末は知っての通りな訳だけど、下巻(Bleu)もよみたい。 (2020年7月9日読了) #吉川ト
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19件の「いいね」

ブラッドリー・ハーパー「探偵コナン・ドイル」
1888年9月、開業医で作家のアーサー・コナン・ドイルのもとへ、元首相グラッドストーンの名で意表をつく依頼が舞い込む。 ロンドンはホワイトチャペルを震え上がらせる連続殺人事件を捜査して欲しいというのだった。 困惑しながらもドイルは恩師であるベル博士や、イーストエンドに暮らす女流作家マーガレット・ハークネスと協力し、やがて「切り裂きジャック」として知られることになる猟奇殺人犯を追うことに。 切り裂きジャックといえばミステリに限らず様々なフィクションで題材にされてきていて、同時代の名探偵ホームズとの対決はそれ自体ひとつのジャンルと言っていいくらいな訳だけど、本作ではかの切り裂き魔に対す
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4件の「いいね」

恩田陸「ロミオとロミオは永遠に」
人類のほとんどが新地球と呼ばれる別の天体に移住した近未来。 地球には日本人だけが残り、汚染物質の除去に従事させられている。 そんな地球で優秀な人材を選りすぐり、エリートを育成するはずの「大東京学園」だったが、過酷な競争と過度の監視体制に反発し「脱走」を試みる生徒たちがいた。 全体に20世紀サブカルチャーのオマージュにあふれたドタバタディストピアSFといった感じで、全部を理解できるのはよほどのマニアじゃないかと。 僕なんかはパロディネタは半分も分からなかったけど、雰囲気だけでも楽しめた。 それぞれの思惑が二重三重にからまりあうクライマックスは息を飲ませる。 タイトルから連想
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ボリス・アクーニン「アキレス将軍暗殺事件/ファンドーリンの捜査ファイル」
極東での大使館勤務を終え、6年ぶりにロシアへ戻ったファンドーリンは、たまたま泊まった同じホテルに、旧知のソーボレフ将軍も宿泊していることを知り、その副官でやはり顔なじみのグクマーソフ大尉とも再会するが、グクマーソフは彼にそっけない態度をとる。 やがてソーボレフの訃報が伝えられるが、グクマーソフらの行動に違和感を覚えたファンドーリンは、それが単なる病死ではないと考える。 モスクワ総督府特任捜査官となったファンドーリンは、日本から付き従ってきた従者のシバタ・マサヒロことマサとともに捜査に乗り出す。 ロシアの時代ミステリシリーズの4作目。 大きく3章構成で、ミステリとして面白いのはやっ
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2件の「いいね」

辻真先「残照/アリスの国の墓誌」
平成27年11月。 声優、近江由布子の経営するスナック「蟻巣」(ありす)が最後の日を迎えようとしていた。 特別の常連客だけ集まって思い出話にひたるうち、話はやはり蟻巣の常連で大御所漫画家だった、那珂一兵(なかいっぺい、本名・灘一平)のこと、彼が生前関わったふたつの事件のことになっていく。 昭和21年、密室状態で巨大な墓石の下敷きになった状態で亡くなっていた、一兵の祖母のキヌ。 昭和41年、漫画家として歩みだしていた一兵の作品のアニメ化をめぐって障害になっていたテレビ局幹部が、一兵の義姉でマネージャーでもあった千鳥とともに、やはり密室状態で毒殺された事件。 名探偵でもあっ
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9件の「いいね」

額賀澪「サリエリはクラスメイトを二度殺す」
朝里学園大学附属高校の卒業演奏会で発生した殺傷事件。 将来を嘱望され、演奏会の大トリをつとめるはずだった雪川織彦が、やはり出演者だった同級生、恵利原柊(しゅう)によって殺害され、出番を待っていた加賀美希子(かがみ・きこ)も右腕にむごい傷を負う。 被害者とも加害者とも高校3年間を送り、同じ日同じステージで演奏した桃園慧也(けいや)たちは、それぞれの形で事件の影を引きずりながら大学へ進学、再び卒業演奏会の時を迎えていた。 そんな彼らの前に、週刊誌記者、石神幹生が現れ、取材と称して事件のことを掘り返しはじめる。 音楽がテーマの青春ミステリ。 晴れがましい演奏会の舞台裏で起きた無惨な事
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2件の「いいね」

鳴海章「全能兵器AiCO」
航空自衛隊パイロットの郷谷良平(ごうたにりょうへい、TACネーム、チャンプ)二等空佐は、飛行実験団勤務を命じられ、三菱重工の最先端技術実証機AT-XⅡの開発に関わることになる。 その開発チームには、元パイロットで、郷谷とも因縁のある佐東理(さとうおさむ、サトリ)もいた。 佐東はパイロット不要の無人戦闘機を理想とし、そのための戦闘用人工知能AiCOの開発に、かつてパイロットとして引導を渡された郷谷を利用しようと目論んでいた。 僕なんかにはどこまでリアルか分からないけど、良質の航空サスペンス。 全体に技術論、空戦論多めだけど、専門用語の解説なんかも丁寧でそれほど引っ掛からずに読める。
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3件の「いいね」

芦辺拓「名探偵は誰だ」
亡くなった夫の意思を受け継ぎ、ホテル経営の裏側で、世界各国で圧政や弾圧に抵抗する人々を支援する曾祖母。 今また、クーデターで成立した軍事政権に狙われるカスカジア人活動家、フェン・チ・アルタンギをかくまおうとしていた。 しかし、そんな矢先曾祖母は急な発作に倒れホテルを離れて入院することに。 悪いことにそんな彼女と入れ違いに、軍事政権の送った探偵がホテルのある島を訪れたという。 曾祖母から唯一事情を打ち明けられていたひ孫のソノオは、同じ便でやってきた4人の宿泊客の中からフェンを探す探偵を見つけ出そうとする。(表題作) 探偵役が犯人をつきとめる推理小説の基本中の基本をあえて逆張りした
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林望「メイフェア劇場の亡霊」
NHKの英会話番組のテキストで連載されたという、イギリスがテーマのショートショート集。 そういう媒体だからか、ちょっと地味というかクラシカルな雰囲気。 大のイギリス贔屓の先生だけに、英語の原典があると思って問い合わせた人もいたというくらい、イギリスの空気を味わえる。 貴族から庶民まで、いい話も悲しい話も教訓めいたものも幽霊譚もありで、いい意味のお手軽感。 (2020年6月12日読了) #林望 #読書 #ショートショート
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有栖川有栖「濱地健三郎の霊(くしび)なる事件簿」
霊的なものを見たり、対話したりする能力を持った「心霊探偵」濱地(はまじ)健三郎の活躍する短編集。 本業のミステリの方は多作されている先生の、怪談ものはこれが3冊目とのことで、タイトルから怪談ミステリを期待したのだったけれど、殺人事件とかの道具だては登場しても、どちらかというと怪談寄り。 ミステリ的にはその手がかりの伏せ方はズルいのでは、となるところもあって、少し肩透かしかも。 漫画家志願からなぜか探偵に転じて助手になったという志摩ユリエが、濱地を手伝うなかで霊的な能力に目覚めていく成長譚でもあって、その意味での読みごたえはあり。 個人的に良かったのは最後の2編「霧氷館の亡霊」
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中山七里「セイレーンの懺悔」
駆け出しの報道キャスター、朝倉多香美は、先輩記者の里谷とともに、16才の女子高校生殺害事件を追う。 彼女を虐待していたクラスメイトたちの存在を突き止め、真犯人と信じてスクープを狙うのだったが、そのスクープは思わぬ波紋を呼ぶことに。 同じ作者の「切り裂きジャックの告白」とちょっとだけつながりあるんだけど、同作を読んでなくても読める。 皮肉屋で時に辛辣なことも言うけど、切れ者の報道屋で、含蓄のある忠告もしてくれる里谷のキャラがいい。 そんな彼や、マスコミ嫌いの宮藤(くどう)刑事らから、報道の理想と現実を教えられたり、突きつけられたりしながらの、多香美の成長が読みどころ。 そ
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芦辺拓「明治殺人法廷」
明治21年、大阪で発生した質屋一家惨殺事件。 唯一の出入口には施錠がなされ、現場は密室状態だったことから、当主の子である乳児の千代吉とともに、蔵に身を潜めて生きながらえたと称する堀越信(まこと)に嫌疑は向けられる。 若手代言人(弁護士)の迫丸孝平(さこまるこうへい)は、信の弁護を務めることになり、東京から流れてきた新聞記者の筑波新十郎とともに奔走する。 旧大日本帝国憲法発布前夜、明治の大阪が舞台の時代ミステリ。 維新から20年を経て、様々な制度、文明の利器を取り入れつつ、古くからの因習、旧弊も色濃く残り、各地での謀反や一揆の記憶も生々しく、薩長藩閥政府による横暴、在野の民権活動家
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竹内真「図書室のキリギリス」
学校の図書館司書が主人公。 校長が寄贈本にこめた謎かけであるとか、一身上の都合で辞職した前任者の行方探しなど、ジャンルとしては日常の謎系ミステリなんだけど、どちらかというと主人公の詩織の成長や、生徒たちとの交流なんかがメイン。 僕なんかは図書室の常連なくせに図書委員はやったことなくて、貸出業務以外の仕事ぶりも興味深いし、作中で名前が出てくる本にも興味がわく。 少し物悲しい展開になるところもあるけど全体にはほんわかした読み味で、本好き、図書館が好きな人には絶対おすすめ。 (2020年4月13日読了) #竹内真 #読書 #青春小説 #日常系ミステリ
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福田和代「東京ホロウアウト」
2020年7月、(作中では)東京五輪開幕式直前に、新聞社にテロ予告の電話が入る。 「東京都内を走るトラックで青酸ガスを発生させる」 やがて、言葉通り宅配会社の配送トラックの積み荷からガスが発生。 トラックドライバーの世良隆司(せらたかし)は、先輩ドライバーの浜口が事件に関与しているらしいと知り、仲間とともに彼の行方を追う。 「物流」がテーマのパニックサスペンス。 雑誌連載が2018年6月から19年12月というのに驚くくらい、鉄道、トンネル、高速道路と様々なルートを破壊され、物が届かなくなってしまった東京の描写は、2020年上四半期を体験した者には説明不要のリアルさ。 店に
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